直截の時間(募集中)

気ままに書きます。勉学(課題の超過)によって停滞する可能性あり、タイトルは募集中だし良いのがあれば変える。

平沢進を聞きますか?

ご!

 

突然だが、平沢進を聞いたことがあるだろうか?

 

1954年生まれの63歳、普通のミュージシャンなら創作のピークも過ぎ、ベストアルバムやカバー集を引っ提げ、毎年ホールでライブをやる歳なのだが、彼は昔と変わらず精力的な創作活動を続け、近年になってまた人気のピークを迎えている、稀有な年齢不詳のおっさんだ。

何故最近再び売れ出したかというと、それはなんとも21世紀らしい理由である。

 

彼はTwitter芸人なのだ。

 

最初は企画的な一時の様子うかがいで開設したアカウントだったが、自分のバンド、P-modelのメンバーの名字が、当時ブレイクしたアニメ「けいおん!」の登場人物に流用されたことをネタに、名言「間違えてないか?私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない。」を放ち、元から浮世離れしてるキャラだったことを知ってるファンは「平沢から萌え文化の話が出るなんて!」と驚き、彼のことを知らない人は「けいおん!の元ネタの人のユーモアセンスが凄いらしいぞ」とRT&フォローをし、平沢唯発言時代は「私みたいなマイナーなんぞに3千人フォロワーが付くなんて何かの間違い」と言ってたのが、今月とうとう10万の大台に乗ってしまい、途中で「マイナー代表」から苦し紛れに「ステルスメジャー」と自称を変更にした彼も、今やネット住民の間ではそこそこ有名人になってしまった。

 

ツイートは正直意味不明なのだが、言葉選びなどのセンスが良くて、筒井康隆が落語をするような、それ単体で一つの創作物として成立している。

正直金取っても良いレベルと自分なんぞは思ってるが、一方で、Twitterのキャラが一人歩きして、音楽家として彼のことを認知しないファンも増えたようである。

 

そんなわけで、この記事では、「平沢、たまに名前聞くしちょろっと見て面白い人とは分かったけど、ぶっちゃけよく分かってない」ぐらいの人を対象に、彼の音楽をプレゼンしよう。

 

人間性も相当マッドな人だが、それはTwitterででも「誰か平沢の魅力を教えてください!」と叫べば、拡散されて山のようなレスポンスが来るので気になる人はそうしてください。

じゃ、行くよ。

 

 

①まずはインパクト大の電子サウンド

 

P-model - Big Brother

 

youtu.be

 

収録アルバム「ビストロン

 

一曲目となると選び手のセンスが問われるが、ここは無難に僕が平沢にハマった最初の曲を推したい。

まず初めの素朴な疑問「核P-modelって何だ?」について答えるが、

 

P-model解散後、歌もの要素の強い「平沢進」名義に専心していたが、久々に電子音バリバリのサウンドでやりたくなった。けどバンド再結成したくないし、「核」って付けることで区別したれ。

 

と、まあこんな感じのものです。

普通ならバンド再結成、あるいは新しいバンドを作れば済む話だが、彼はマッドサイエンティストと仙人を足してじっくり煮詰めたような人格の持ち主なので、歴代バンドメンバーとは解散後もずっと仲良い癖に、バンドは絶対いやなのだそうだ。

という訳で、平沢の話で解せない行動や設定や謎ワードが飛び交っても「あいつはそういうやつだ」という風にスルーするように。

 

長々と話したが、執拗にまで重ねられた電子音に禍々しいコーラスの入る強烈なこの曲は、タイトルから分かるようにディストピアがコンセプトにある。

基本的に彼はSF好きの万年中二病なので、SFチックな設定を好んで用いる。なので、この曲を気に入った人はまだまだ同路線で楽しめるので喜びましょう。

 

②電波系ヒラサワここにあり

 

平沢進 - 世界タービン

 

 

収録アルバム「サイエンスの幽霊

 

※PVがガンギマリなので、視聴時には周りの目を気を付けてください。

 

曲としてはもっと公式が狂ってるものもあるが、あくまでも入門なので、ここは彼のマッドサイエンティストっぷりが程よく確認できるこの作品にしておいた。

 

何が「ヨングミナー」なのか、何が「タービンが回るから大丈夫」なのか、我々には一ミリも分からない(ヨングミナーは古代朝鮮語らしいが、そもそも普通「古代朝鮮語を叫んで曲を始めよう!」という思考には至らない)。

恐らく想像はとっくについているだろうが、彼の歌詞は日々のツイートに負けず劣らず意味不明で、解読しようとするには大変骨が折れる。

音楽を聴くというのは聞き手側の知識や感性を作品に投影する行為」と規定する平沢らしく、そこには普段自分では意識してなかったが心の奥底では気付いていたかもしれない、物の見方が転がっている。そういう風に人々を別の領域に導くのが、彼のやり方。

フロイトユング、SF作品が彼のインスピレーション元なので、この記事を機にハマった人がもしいれば、ハヤカワ文庫などとゆくゆくはお友だちになることだろう。

 

③電波だけが取り柄じゃないよ平沢は

 

平沢進 - ロタティオン(LOTUS-2)

 

 

 収録アルバム「千年女優オリジナルサウンドトラック」、「賢者のプロペラ」、「映像のための音楽

 

最初の二曲でビリビリしびれる平沢サウンドを堪能してもらったが、勿論それだけが平沢の強みではない。

これはサブカル界隈では有名人のアニメ監督今敏の「千年女優」のED曲であり、おそらくツイッター以前の平沢新参者のメインルートだったのが、この曲or同監督の「パプリカ」への提供曲であろう。

一人の女優の生涯をダイナミックに描いた本作の感動を更に溢れさせるこのメロディー。輪廻転生を象徴する蓮をタイトルに据えた歌詞も含め、余りにもクライマックス過ぎる超名曲である。ちなみにタイトルにLOTUS-2とあるが、LOTUSという曲を聞いた今敏がインスパイアされて千年女優を作ったことに対して、平沢本人が直々に続編を作ってレスポンスをするという何とも羨ましい話である。

今敏監督は惜しくも「パプリカ」を遺作として亡くなったが、葬式の出棺時にはこの曲が流れた。作品だけでなく、一人の生身の人間の人生までをも包みこむスケールの大きさは、ここまでに浮世離れした達観の域にいる平沢だから出来ることだ。

恐ろしいことに、平沢はこのレベルの曲を割と簡単に作ってしまう。

普通のミュージシャンが、最盛期のアルバム二、三枚にやっとこさ収められるクオリティーの曲をちゃちゃっと造作もなく作ってしまう。なんとまあ、恐ろしいなで肩のおっさんだ。

 

④中二万歳!バカコーラスに酔いしれろ!

 

平沢進 - 灰よ

 

 

収録アルバム「Ash Crow

 

先述の今敏しかり、独特の世界観、SFやファンタジーと親和性の高い作風もあってか、平沢にはクリエイター側のファンも多い

ベルセルク」の作者、三浦健太郎もその一人である。「ベルセルク」のアニメには平沢が度々曲提供をしており、この曲は去年のアニメ化に際して書き下ろされた新曲である。

分かりやすいオーケストラサウンドをバックに熱唱しているが、壮大なコーラスは女性のクワイアの打ち込みもあるが、ソプラノも含めて彼の多重録音が基本的なスタイルだ。コピーペーストではなく、全ていちいち歌い直しているため、「バカコーラス」と自称してるが、そもそもこんなに高音域になったのも、歌よりオケから、しかも鍵盤の黒鍵を使わずに作曲していたら自分の声域が二の次になって…と無茶苦茶な説明をしており、怪我の功名も大概である。

ベルセルクの曲は大体こんな感じなので、バンドを「培養」状態(無期限活動休止という意味です)にして最大の収穫は、バンド時代にはなかったダークファンタジー路線を量産するようになったところにあるだろう。

 

⑤昔はこんなこともしてたよ

 

P-model - Potpourri

 

 

収録アルバム「Potpourri

 

一応言っておくが、彼は元バンドマンである。ということでちゃんと生バンドで演奏していた時期もある。それも彼以外の作曲やリードボーカル曲もある。それでも平沢のキレッキレのセンスは当時から顕在で、むしろ時代を先取りしすぎてよく分からない箇所も多々ある。

この収録アルバムはいわゆる「ブレイクした後に同じ路線で行くのに飽きて出したダークな三作目」なのであるが、平沢の場合は「これぐらいで離れるファンならどっかいっちまえ」ぐらいの開き直りをして作っているので、ブレがなくアングラを全力でやりきっている。

平沢と言えばファンへのツンデレが当時から有名だが、ここまでそっけないのも「ファンに背を向けても付いてくるのがミュージシャンの実力」みたいな考えが根本にあるようで、違法ダウンロードにも「所詮は金を払う価値がないと思われているだけのこと」と言明し、自らは約20年前からアルバムリードトラックをシングルカットではなく、無料ダウンロードで配信するという、ストリーミング普及前の欧米の音楽シーンの一般的な手法を先取りしていた。そこまで自らの作品に自信を持っている中々に気骨のあるタフガイなのだが、デビュー間もない時期に彼のことを見初めたのが、なんとあのDavid Bowieである。

楽屋にやってきて馴れ馴れしく話しかけてくる外国人がいるなと思ってよく顔を見たらBowieだった、とあまりにも平沢らしいエピソードだが、Bowieはかなりお気に召したらしく、その時(1980年ごろ)の日本での記者会見で、最近気に入ってるミュージシャンにP-modelを挙げ、坂本龍一との対談でもP-modelをイチオシするぐらいに、彼の頭には強烈な存在として残ったようだ。

XTCの前座をやった際にも気に入られたらしく、TwitterでアンディーがファンからのリプライでP-modelを覚えてる?と聞かれて、「Kameari Pop(P-modelの曲)...なんて素晴しい曲だ」と返す一幕もあり、今の電子音と壮大なオケという作風が確立する前から、その才能は遺憾なく発揮されていたのだ。

 

⑥その昔はこんなこともしていたよ

 

MANDRAKE - 飾り窓の出来事

 

 

収録アルバム「unreleased materials vol.1」

 

自らのギター奏法を「ロバートフリップ(キングクリムゾンのギタリスト)のカット&ペースト」と言いきってしまうぐらい、プログレに傾倒していた彼は、P-modelのチープなシンセパンクサウンドでデビューする前は、ほぼ同じ面子で本格的なプログレッシブロックを演奏していた。

この当時は泣かず飛ばずでちゃんとしたレコーディングはなく、後年公式がリリースするまではこのバンドの音源を簡単には聞くことが出来なかったが、プログレ愛好者の間では平沢をここから知る人も多いぐらいに、ハイクオリティーの作品を作っている。

ようやくレーベルが注目した頃には既に行き詰まりを感じていた彼は、ポストパンク、ニューウェーブサウンドに平然と鞍替えしてしまう。the policeも驚くぐらいの激変っぷりからは、平沢はずっと昔から達観した変人の「平沢」だったのだと窺い知ることが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

以上で作風ごとにざっと説明したが、彼の名曲、代表曲の選出は「ポールマッカートニーの名曲ランキング」を作るぐらいの悪手なのは間違いなく、一度ハマったら無間地獄のごとく珠玉の作品が現れてくるので、聞く際には摂取量にご注意ください。

 

さて、彼の近況だが、久々に生ドラムを迎え入れたライブも無事盛況に終わり、そのライブの記念に、「Twitterで9万フォロワーが付いた記念の五日間のライブ(それが生ドラムのライブ)で、スネアを9万回叩くことに成功したら無料配布する9万音符からなる曲」(ごめん、何言ってるか分からないのは自分もおんなじだ)が発表され、更にはライブ作品の編集のようなもろもろの雑務を終えたら新譜制作に取りかかると宣言しており、再び創作期の真っ盛りとなるだろう。

おそらく、ツイッターでは明らかに早すぎる作曲過程が垂れ流しにされるので、サービス精神旺盛な新曲のヒント(ただし、一ミリも音が想像できない)も含めて楽しむのが吉とであろう。

他にもハッシュタグで募った質問に答える(ただしツンデレ)ストリーミング配信などなど、積極的に活動している様はとても還暦を越えた人間には思えないぐらいなので、この記事から少しでも平沢に興味を持った人は是非にフォローしよう。

ついでに言うと、平沢のファン「馬の骨」のアカウントを数人フォローしてると、意味不明な平沢のツイートを解読して日本語に直してくれるから、ファンとの交流もやるのが良いぞ。マジで。日本語で書かれた平沢の言葉が我々の知ってる日本語になるのはそれ自体が一つの創作活動。