直截の時間(募集中)

気ままに書きます。勉学(課題の超過)によって停滞する可能性あり、タイトルは募集中だし良いのがあれば変える。

プログレ伏魔殿、King Crimson~②「ジャズロックの進化」

 

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LINEUP 2

 

2ndアルバム「ポセイドンのめざめ」完成と同時に空中分解したバンドを建て直すために、残された二人、Robert Fripp(Gt, Key)とPeter Sinfield(Lyric, Vision)は新しくメンバーを呼び込み、間髪入れずに3rdアルバムを制作していくことになる(ちなみに2ndのレコーディングは1970年の1〜4月、3rdは同年8〜9月)。

そのときの新しいメンバーは、以下の通りである。

 

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左から右にFripp, Mel Collins, Andy McCulloch, Gordon Haskell, Sinfield.

 

Gordon Haskell(Bs, Vo)

Frippの旧友であり、前作においてもGreg Lakeが歌録りに間に合わなかった曲でゲスト参加をしている。品のない声が特徴。ツアー前のリハーサルで喧嘩になって脱退。あまりに短期間な在籍期間からか、レーベルからは正式メンバーとして認められなかったらしく、印税を巡ってバンドとの間に禍根が残り、後年のアンソロジー音源でもボーカルが差し替えられるなどの措置が取られている。ちなみに脱退後はソロで活動し、2001年にはヒットシングルを出している。ここ数年も活動している模様。

 

Mel Collins(Sax, Flute, Key, etc.)

前作から参加しているソロイストで、ソプラノからバリトンまでのSaxとFluteを主に担当し、4th まで在籍する(脱退の詳細は後述する)。フリージャズを好む一方、クリムゾン脱退後は、The Rolling StonesTears For Fearsを始め、多くのバンドでセッションミュージシャンとしてメロウなプレイを披露している。「レッド」にIan McDonaldと同じくゲストという形で参加し、早くも関係修復を匂わせる。その後、LINEUP 8で40年ぶりにメンバー復帰、来日時にはFrippから仲直りを提示してきたことを読売新聞で明らかにしている(笑)。ちなみに、笑うと目が細い&サスペンダー愛好家という、僕の性癖ど真ん中の可愛いじいちゃん枠です。

 

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サスペンダー姿でちょうど良い感じなのがぱっと見つからなかったので、笑顔のお写真を。はあ、眼福。

 

Andy McCulloch(Dr)

歴代メンバーの中ではかなり影の薄い人物であるが、前任者同様音数は多く、さりとて騒々しくない、品のあるプレイに徹している素晴らしいミュージシャンであるのは間違いない。Greg Lakeを引っこ抜いていったKeith Emersonの斡旋で加入したが、ボーカルの脱退でツアーがおじゃんになったので同時に脱退。その後Frippに再就職先を紹介されたものの、あまりうまくいかず、最終的には音楽界から引退。

じゃあ今何してるの...とwikiを見たら、趣味のヨットに生活の基盤を置き、何と五輪選手の指導も行う大物になっていた模様。

 

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3rd「リザード」(1970年)

原題「Lizard」 

 

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まずジャケットが色彩豊かで、前2作の辛気臭い世界観からの脱却が見受けられる。

音楽性についても、ジャズロックという根本的なところは今までと同じでありながら、(ダークな)メルヘンワールドを前面に打ち出しており、2ndで感ぜられたFrippの作風の限界に関する疑惑は、ある程度払拭されたと言ってもいいだろう。ボーカルがピアノの旋律の上に漂い、ベールの向こうから囁きかけてくるような冒頭から、一変してメロトロンの野太い音が炸裂し、Frippのクラシックギターが縦横無尽に飛び回る1曲目「サーカス」を聞くだけでも、その変化は明白である。脱退後の前作でも依然存在感を示していたIan McDonaldの影は跡形もなく消え去っている。20分を越す大作「リザード」も、曲調豊かな組曲構成でありながら、ジャズとメルヘンの二本柱は一貫して基底にあり、今までの「ロックによるジャズの咀嚼」から一皮向けたアルバムとして、この作品は評価されていいだろう。

 

ただし、長所だけではないのが、このバンドの面倒なところで、どうにもリフや音が安っぽいし、ボーカルの声質がサウンドに合わない。

 

冒頭だと0:18〜0:22あたりを聞けば、ボーカルの品のなさがよく分かると思う。

 

チープさに関しては、このバンドの特性、ひいてはプログレの良さでもあるので、ファンの間ではむしろご褒美であったりするが(笑)、ボーカルの声に関しては、残念ながらごく真面目なバラードもこのアルバムには収録されているため、看過できないのだ。

 

Frippもその問題を分かっていたのか、組曲リザード」冒頭の幻想的なパートでは、中性的な柔らかい声が特徴的なyesのボーカル、Jon Andersonを起用しており、B面では正式メンバーよりゲストが歌っている時間の方が長いという、とんでもない逆転現象が発生しているのである(ちなみにFrippが彼をクリムゾンのボーカルにスカウトしたところ、yes側が以前に彼に加入を打診した際に断られた話をまぜっかえされたとかいう話が残っている)。

 

長々と話したが、初心者に向けて総括すると、ボーカルという欠点もあるものの、デビュー時の模倣という悪癖を捨て去ることに成功した記念碑的作品であるのは間違いなく、初手としてこのアルバムを手に取ることは勧めにくいものの、クリムゾンにハマった人間が4枚目、5枚目辺りに聞くとしては悪くない選択肢であるように僕は思う。実際、このアルバムを最高傑作とするファンは、少数派であるものの、そこそこいるのもまた事実である。

 

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 LINEUP 3

 

またもやツアーが始まる前にボーカルとリズム隊が抜けてしまったため、バンドは後任を探して奔走することとなる。Frippは旧友であるJohn Wettonにオファーを出すが、自身の所属するバンドの優先を理由に断られる(その後LINEUP 4で加入)。最終的にはオーディションで以下のメンバーが新体制の一員として迎え入れられることとなった。

 

(なお、オーディション参加者であったBryan Ferryは、不採用ではあったものの、才能を認めたFrippがレーベルに紹介し、晴れてRoxy Musicのデビューにこぎつけている)

 

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左から右にBoz, Sinfield(笑), Ian Wallace, Fripp, Collins.

 

Boz(Bs, Vo)

度々名前の出てきているKeith Tippettのプロジェクトの関わりからバンドに加入。それまではベース経験が一切なかったが、ベーシストの選考が難航していたことから兼任することとなった(笑)。ベースに関しては特に言うことはないが、下品な声も澄み切った声も出せるボーカルスタイルは、前任者とは大きく異なる。

他の楽器隊メンバーともどもFrippと対立し、3人でブリティッシュブルースのドンであったAlexis Kornerのバンドに加入。その後脱退し、Bad Companyにベーシストとして参加。Greg Lakeよろしくクリムゾン以上の商業的成功を果たす。60歳で死去。Ian Wallaceと同じ享年で、2人して近年ボチボチ鬼籍に入りつつある歴代メンバーより10年ほど早くして亡くなっている。それに加えて、この時期のクリムゾンが歴代トップクラスの不和状態であったため、「Frippの祟り」が密かに囁かれている。死んだ当人としては堪ったもんじゃないが、不安定なバンドという環境が彼に与えた心労を慮ると、クリムゾンが彼の命を縮めたというのも案外眉唾な話ではないかもしれない。

 

Ian Wallace(Dr)

前任者のAndy McCullochと同様、Keith Emerson邸の居候をしていた関係から、メンバー加入を志願し、当初はボーカル志望であったがドラムとして加入。彼もまたジャジーな演奏スタイルだが、過去の2人よりワイルド。Alexis Kornerのバンドに加入するため脱退。更にそのバンドも辞し、Peter FramptonBob Dylanなどのバックを務め、セッションミュージシャンとしてそこそこに活躍した。晩年には21st Century Schozoid BandのMichael Gilesの後任を務めたり、Crimson Jazz Trioを結成したりと、かつてのキャリアを総括する活動も盛んに行った。特に後者は安直なジャズアレンジではなく、全力勝負のジャズなので、クリムゾンの数ある派生作品の中では特にオススメしたい。

 

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4th「アイランズ」(1971年)

原題「Islands」

 

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本作は、前回のB級臭さを継承しつつも、Bozのボーカルとしての才能を活かし、歴代トップクラスのバラードナンバーを共存させることに成功した、過去3作の集大成的作品である。

 

厳かにウッドベースボウイングから始まる「フォーメンテラ・レディ」は、終始穏やかにどこか遠い世界の原風景を描き出す。その後、どこか胡散臭いユニゾンフレーズとジャジーなドラムが印象的なインスト「船乗りの歌」を挟み、下品パート「レターズ」、「レディース・オブ・ザ・ロード」に突入する。天下のThe Beatlesを露骨にパロッタ後者はさほど下品な歌い方(歌詞は卑猥)ではないが、前者でのねちっこい叫びは、明らかに今までのクリムゾンからは逸脱した音楽性を伺わせる。  

 

そして一番大声で言わせてほしいのだが、最後に置かれた名曲「アイランズ」は、この世のものとは思えない美しさで、思わず溜息が出る。エフェクトがかかったBozの声は、風に舞う精霊が歌うかのようであり、Keith Tippettの弾くピアノも、ガラス玉のようにそれぞれの音が澄み切った光を湛えている。その奥から立ち上ってくるメロトロンの温もりある和音の調べ。全てが完璧である。

 

この曲はしっかりお金を払って聞いて欲しいので、あえてリンクは貼らない。その代わりではないのだが、(どちらかというと悪い意味で)とんでもない音源を紹介しよう。

 

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1971年春、デビュー時以来のツアーを敢行、同年秋に「アイランズ」を制作、そして間髪入れずに再びツアーに出ようとしていたバンドであったが、表面的な充実とは裏腹に、年末にはSinfieldはクビにされ、残りの3人も、翌年の初めには己の楽曲以外を受け付けないFrippと対立し、最早バンドの崩壊は不可避であった。しかし、契約によると、彼らはまだライブを消化する必要があったため、既に解散状態にあったバンドは「再結成」し、最後のツアーに乗り出した。その際に録音された音源(バンド初のライブ盤「アースバウンド」に収録)が次の通りである。

 

 

ニコニコからのリンクになっているが、ご容赦を。半世紀に渡って演奏されてきたバンドの代表曲だが、このテイクは、カセットテープで録音された極悪音質と、バンドの険悪なムードが浮き彫りとなった演奏とが、破壊的な連鎖反応を起こしているベスト(あるいはワースト)テイクとして名高い。

 

対立の要因としてはFrippの偏執的な所が大きいのだろうが、更には3人がブルースなどのブラックミュージックを好んでいたのに対して、Frippは現代音楽の前衛的なスタイルを取り入れていた(80sのLINEUP 5ではその傾向を更に強める)という図式が、ライブ音源を聞く限りはっきりと出てしまっている。ただ、この3人の路線、面白いかというと、ブルースとしてあんまり面白くない(リンクを貼った演奏は比較的マシだが)。そんな訳で、嫌がらせのようにつまらないブルースを曲中に突然始める3人に、ムッとしながらもあくまでも自我流のアドリブを弾くFrippという、客側もどう受け止めていいのか分からないツアーの後に、仲直りすることもなくあっけなくバンドは解散してしまう。

 

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1969年のデビューから3年の間に、4枚のアルバム、4人のベーシスト、3人のボーカル、ドラマー、2回のレコ発ツアー、2人のソロイスト、と列挙するだけでも目が回りそうな慌ただしい展開を追ってきたが、最終的にはFripp以外が彼に愛想を尽かして脱退してしまうという結末を迎えた。その反省もあったのか、以降はメンバーの喧嘩別れによるバンド脱退は見受けられなくなり、スタジオでのアルバム制作よりもライブを活動の主体とする、今までと真逆の活動形態がとられるようになる。また、音楽性も今までのジャズロックとは決別した、よりヘヴィーな演奏がバンドのトレードマークとなるのである。