直截の時間(募集中)

気ままに書きます。勉学(課題の超過)によって停滞する可能性あり、タイトルは募集中だし良いのがあれば変える。

デヴィッド・ボウイ 2ndアルバム『David Bowie(通称:Space Oddity)』

2ndDavid Bowie(通称:Space Oddity)』(1969年)

 

 

おすすめ度★★☆☆☆

初期の代表曲と偉大なる凡曲による、フォークとのわずかな蜜月期間の徴。

 デビューアルバムであった前作が不発に終わり、レーベルとの契約も切れてしまったボウイは、音楽から一時的に距離を置き、しばしの間、チベット仏教やパントマイム(師事したリンゼイ・ケンプはジギー時代のライブの演出などに関わっていくこととなる)などに傾倒することとなる。

 短編映画への出演や、プロモーションビデオでのパントマイムの披露(内容はふと手に入れた仮面の力によって成り上がったスターの盛衰で、後のジギー・スターダストの運命を暗示しているようである)に力を注ぐ一方で、音楽への興味関心も完全に失ったわけではなかった。恋人ヘルミオーネらと複合芸術集団を結成してライブを行ったと思えば、次の(あるいは並行して付き合っていた)恋人メアリーとは「グロース」という名前のアーツ・ラボを主催し、参加者は表現者と鑑賞者の両方の役割を担って活発な芸術活動に励んだ。

 1stアルバムの失敗にもめげず、アーティストとしての道を歩み続けるボウイの元にまたとない転機が舞い込んだのは、1969年、芸歴5年目の時であった。

 前年に公開された映画『2001年宇宙の旅』に触発されて書き上げた楽曲「Space Oddity」が着目され、新しいレーベルとの契約にこぎつけることとなったのだ。世間ではアポロ11号の月面着陸が話題になっていたというタイミングもあり、報道番組などで頻繁に流された同曲はお茶の間の話題となり、初のヒット曲となる。

 宇宙飛行士のトム少佐が無限に広がる宇宙空間で人間の卑小さを痛感し、精神的危機に陥るというニヒルな歌詞とは裏腹に、ロケットの打ち上げSEや響き渡るシンバル、壮大なメロトロンの絡み合う曲調は、宇宙に対する人々の希望を代弁するかのようであり、一筋縄ではいかないボウイの音楽の真骨頂とも言える内容であった。

 その後に満を持してリリースされた2ndアルバム『David Bowie(通称:Space Oddity)』であるが、前作の雑多なジャンルを詰め込んだ作風から一転してフォーク路線に一本化しており、出世作の「Space Oddity」こそ派手な編曲がされているものの、全体的に地味な印象は否めない。後に様々なジャンルを開拓していったボウイは、ギターと歌声のみで人心を掌握するタイプのミュージシャンではないだけに、まだ通過点の最中、といった出来だ。

 別れた恋人への未練を赤裸々に語る「Letter To Hermione」と異能力者らしき少年が迫害に逢う「Wild Eyed Boy From Freecloud」という、私小説の話者とストーリーテラーとの立場とが混在する辺り、未だ作家性が完成していないと取れる点から見ると、1stアルバムの方がむしろトータル感があって洗練していたとも言えよう。

 そんな、(つまらなくはないが)平凡な楽曲の並びの中でも、LPのA面とB面をそれぞれ締めくくった2曲は本作のハイライトとなっている。B面側の「Memory of a Free Festival」は、先述の「グロース」に始まるヒッピー・ムーブメント(アルバムジャケットのボウイもカールヘアー)の一連の経験で得た、自由を追い求める精神の素晴らしさを歌い上げているが、A面の「Cygnet Committee」では、「Space Oddity」がヒットしたことによりアーツ・ラボのインタラクティブな関係性が崩壊し、ボウイの演奏を一方的に享受する場所になってしまったということを嘆いており、ヒッピーと密接に結びついた「フォーク」という音楽ジャンルを媒介にして歌うには皮肉めいた歌詞が綴られている。

 また、ボウイの死の直前まで断続的にプロデュースを続けたトニー・ヴィスコンティとの邂逅も本作を語るにあたって無視できない。ミュージシャン気質のプロデューサーであり、ストリングスのアレンジなどでも貢献した彼は、本作でも平坦なフォークサウンド一辺倒に陥ることを避けて膨らみのある編曲をしており、熱心なファン以外でも聞くに耐えうるクオリティーに作品全体を引き上げている。尤も、出世曲に関してはおふざけと決め付け、あるいはアポロ11号と関連させたあざとさを厭い、プロデュースを拒絶したという曰く付きではあるが。

 

参考文献

大久達朗編(2015)『デヴィッド・ボウイ 1964-1969』シンコーミュージック・エンターテイメント.

野中モモ(2017)『デヴィッド・ボウイ筑摩書房.

Pegg, S.(2016)The Complete David Bowie, 7th ed., London.