今年読んで良かった本
幸田文『木』
映画『Perfect Days』の影響で。おんぶされながらも木を見に行くエピソードが印象的。
片岡一竹『新疾風怒濤精神分析用語事典』
おそらく最も分かりやすいラカン入門。同人誌という体裁なので、絶版するとそれまでなのがネック。文化を構想するのです。
川野芽生『奇病庭園』
幻想小説に慣れ親しんでいないまま、むさぼるように読んだ。
イアン・ランボット『九龍城探訪』
ただの写真集ではなく、九龍城の住人たちへのインタビューを編纂したルポである。
松木邦裕『耳の傾け方』
臨床家に向けられた本と明言されているが、本書で書かれているのは、人に耳を傾けるという営みの丁寧な指南。肯定も批判的需要も。
ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』
「生き延びるための哲学」。作者の出自をあまり加味すべきではないとは思うが、いかにこの本が生まれたか、その痛切な思いは、作品の密度に連関した強度がある。
人と話していたらこの本の要点を忘れていることに気がついたので読み直します。身体的に、動的に、主体を捉える試み。
山崎孝明『精神分析の歩き方』
学会で上手く輪に入れず、悔しい気持ちのままネカフェに帰って漫画を読んだという思い出話から始まる、日本における精神分析の受容史。自分と話している人には耳タコだろうが、精神分析を社会批評のマジカルワードとしている人たちへの牽制として、臨床側の精神分析の本を読んでほしい。その上で勧められる一冊。
『折りたたみ北京』
中国のSFアンソロジー。中国へのステレオタイプからあまり離れていないような世界観が並ぶので、他国へのナショナリズムの再強化とも言えなくはないが、知性を持った鼠を殺すという一大運動、円周率を考える恐ろしい試み、物理的階級社会と、知的興奮をもたらす話が読める。
噴飯物の啓蒙小説。歴史的古典だって面白いんだぞっ!
飛浩隆『自生の夢』
和製ソラリスと文字の暴走。
アンリ・エレンベルガー『無意識の発見』
フロイトが無意識を「発見」するまでの長い歴史。浩瀚な本ではあるが、概説書から漏れるような歴史を知る、それは大事な営みである。
田中ひさてる『ちょうぜつソフトウェア設計入門』
分かるように来年はいっぱい勉強します。
ドストエフスキー『地下室の書記』
俺じゃん、というにはもうちょっと素直になれた。
ジョルジュ・バタイユ『呪われた部分』
俺じゃん、というにはもうちょっと学が足りない。
百年の孤独を読み終わると「百年の孤独を読み終えた人」になる。
ミシェル・ウエルベック『闘争領域の拡大』
冒頭数ページで爆笑。ドストエフスキーを読んでほっとしていたが、やっぱり自分素直じゃないわ。
斎藤慶典『フッサール 起源の哲学』
『レヴィナス 無起源からの思考』と合わせて読みたい。フッサールの入門書以上の働きをしている、知的興奮を得られる一冊。
ベティ・エドワーズ『脳の右側で描け』
自分には絵の才能がないと思っていても聞く耳を持つ余地があるなら、発想の転換をしたいひとにはオススメ。
横田祐美子『脱ぎ去りの思考』
「エロティシズムの人」としてのバタイユ像を破壊する名著。『レヴィナスの企て』にも通ずる、パブリックイメージを超克する美しき書。
坂部恵『カント』
結局カント本人の文章を200ページほど読まさせられたじゃねーか!
郡司ペギオ幸夫『創造性はどこからやってくるか』
亡き両親との向き合い方が珍妙かつ美しすぎた。
田亀源五郎『弟の夫』
めちゃくちゃ泣いたので読んでほしい。