前回の記事についてだが、そもそもボウイの誕生日か命日には何かしらのボウイに対する文章を公開するつもりであったのに、「あること」に浮気しまくったがため、本来の「お気に入りのアルバムのうち1枚を取り上げて記事にする」という目標はおろか、せめて既に書き上げていた文章を投稿するということも、校正そっちのけで「あること」に専心していたために何一つ果たせなかった。愚か者め。
んで、「あること」というのがこれ。
つまり、オリジナルアルバムに入ってないボウイのレパートリーを時系列に並べてプレイリストにしようとしたのだ。オリジナルアルバムを全部聞いたわけでもない(ライブ音源でほとんど収録曲を聞いてしまった『1.Outside』と『Heathen』、そしてタイトル曲以外未聴の『Budda of Suburbia』の3枚です。スイマセン)のに、寝食を文字通り「忘れて」ぶっ通しでやってしまった。おかげで躁転もラクショウ。な〜にやってんだか。
しかし作りっぱなしというのも、安定剤のリチウム君にはあまりにも不憫な話なので、その成果をしっかり人様にお披露目して形に残すことにしよう。あ、「遺す」じゃないからね。自然死でもない限り。
まずは、選定ルールを。
・オリジナルアルバム本編に収録されていない。
・公式が発表したものである。
・スタジオで録音されている。
・断片ではなく1つの完成した曲である。
・「ボウイが関与している」ということを重視するため、客演やRemixなどは除外する。
・アルバム収録曲でも、テイク違いや尺が長いバージョンは選定対象となる。
要は、「ボウイ密度の高い音を1秒でも長く聞いていたい!」という自分の欲望の赴くままに収集したリストということであり、フロアを沸かすためのリミックスやコピペで無理やり尺を伸ばしたシングル・エディットなどは躊躇なく削った。そのため、微妙なアレンジ違いがリストに含まれていなくとも、うっかり見落としたのか、あえてリストから外したりしたのかのいずれかと思ってほしい。
なお、例外的にPet Shop BoysとNine Inch NailsとMobyとAphex Twinの4者によるリミックスは収録することとした。まぁ、顔ぶれとしては妥当であろう(追記、Beckによるリミックスも追加することとした。許せ)。
それと、『Conversation Pieces』の1枚目と2枚目、『The Next Day Extra』の収録曲は選曲の対象外とした。「未発表」という共通項の下、あれだけの曲数が公式によって大っぴらに配布されたのであるならば、その初出時の場所に帰属させたままにするというのが筋というものだ(つまりはサボりたい)。
前書きとしては最後になるが、本リストの情報に関してはほとんどNicholas Pegg氏の『The Complete David Bowie』の2016年版を参考にした。最新版といっても4年前の刊行ではあるが、トップクラスのボウイ研究家ですらボウイ没後の時点で分かっていなかった点については、おそらく4年後の自分にも分からないことなのであろうと、わざわざ調べることはしなかった。
その代わりでもないが、バージョン違いなどの混乱が起きやすい楽曲には副題を適宜付け足し、レコーディング時期と収録アルバム(2020年1月現在においてサブスクで配信中のアルバムを優先的にチョイス)を書いておいたので、参考にしたい人はどうぞ。
※クロスビートの新刊『David Bowie 1964-1969』を入手したので、レコーディング時期などの情報を追記する予定。
- 1-Liza Jane(Unknown, 1964)
- 2-Louie, Go Home(Unknown. 1964)
- 3-I Pity the Fool (feat. Jimmy Page)(January, 15th, 1965)
- 4-Take My Tip(January, 15th, 1965)
- 5-You've Got a Habit of Leaving(Until August, 1965)
- 6-I Want My Baby Back(At the Time of Recording "You've Got a Habit of Leaving," 1965)
- 7-Baby Loves That Way(Until August, 1965)
- 8-Glad I've Got Nobody(At the Time of Recording "Baby Loves That Way," 1965)
- 9-I'll Follow You(At the Time of Recording "Baby Loves That Way," 1965)
- 10-Bars Of The County Jail(Mid-1965)
- 11-That's Where My Heart Is(Mid-1965)
- 12-Can't Help Thinking About Me(Unknown, 1965)
- 13-And I Say to Myself(Unknown, 1965)
- 14-Do Anything You Say(February, 22th, 1966)
- 15-Good Morning Girl(March, 7th, 1966)
- 16-I Dig Everything(June, 6th, 1966)
- 17-I'm Not Losing Sleep(July, 5th, 1966)
- 18-The London Boys(October, 18th, 1966)
- 19-Did You Ever Have A Dream(November, 24th, 1966)
- 20-The Laughing Gnome(January-March, 1967)
- 21-The Gospel According to Tony Day(Later onto January-, 1967)
- 22-Toy Soldier(April, 5th, 1967)
- 23-Waitng For The Man(April, 5th, 1967)
- 24-Silly Boy Blue(April, 5th, 1967)
- 25-When I Live My Dream (Different Version)(June, 3rd, 1967)
- 26-Let Me Sleep Beside You(September, 1st, 1967)
- 27-Karma Man(September, 1st, 1967)
- 28-In The Heat Of The Morning(March-April, 1968)
- 29-London, Bye, Ta-Ta(March-April, 1968)
- 30-Ching-A-Ling (Full Length)(October, 24th, 1968)
- 31-Ching-A-Ling (Overdubbed by John Hutchinson)(November, 27th, 1968)
- 32-Sell Me A Coat (Re-Recorded Version)(January, 25th, 1969)
- 33-Space Oddity (Alternative Take)(February, 2nd, 1969)
- 34-Unwashed and Somewhat Slightly Dazed (inc. Don't Sit Down)(Later onto June, 1969)
- 35-Conversations Pieces(Later onto June, 1969)
- 36-Ragazzo Solo, Ragazza Sola(December, 20th, 1969)
- 37-The Prettiest Star (feat. Marc Bolan)(January, 1970)
- 38-London, Bye, Ta-Ta ("99.999%" Marc Bolan plays the Lead Guitar by Tony Visconti)(January, 1970)
- 39-Columbine(For "The Looking Glass Murders," 1970)
- 40-The Mirror(For "The Looking Glass Murders," 1970)
- 41-Threepenny Pierrot(For "The Looking Glass Murders," 1970)
- 42-Memory Of A Free Festival (Pt. 1)(March-April, 1970)
- 43-Memory Of A Free Festival (Pt. 2)(March-April, 1970)
- 44-Holy Holy (Demo)(Autumn, 1970)
- Bonus-Even A Fool Learns To Love (Unknown, 1968)
名義
Davie Jones期(1-11)
& The King Bees(1-2)
& The Manish Boys(3-4)
& The Lower Third(5-9)
不明(デモ曲)(10-11)
David Bowie期(12-44)
& The Lower Third(12-13)
& The Buzz(14-16)
ソロ(17-21)
& The Riot Squad(22-24)
ソロ(25-44)
1-Liza Jane(Unknown, 1964)
(from 『Nothing Has Changed (The Best of David Bowie) [Deluxe Edition]』)
記念すべきデビューシングル。
同時代の伝説的ミュージシャンのデビュー期と比べたら没個性な部類であるが、最後のツアーで数十年ぶりにライブで演奏し、2014年のベストアルバム『Nothing Has Changed』のデラックス盤の大トリを担っている辺り、本人の思い入れは強い楽曲なのだろう。
お蔵入りアルバム『Toy』 でセルフ・カバーを行っている。
2-Louie, Go Home(Unknown. 1964)
(from 『Early On』、サブスク配信なし)
キャリア初期のサブスクにない音源に関しては、コンピレーションの『Early On』を買えば95%が揃う。
3-I Pity the Fool (feat. Jimmy Page)(January, 15th, 1965)
(from 『Bowie 1965!』)
サブタイトル通り、ジミー・ペイジがギターを弾いている。後にツェッペリンで十八番となる手癖暴走列車ぶりを披露するということは当然ながらなく、駆け出しのソロ・シンガーの存在感を覆い隠すことのないよう、そつのない演奏をこなしている。 ボウイはこの時にペイジから教えてもらったリフを『The Man Who Sold The World』の「The Superman」に流用している。
ちなみに『David Bowie 1964-1969』によると、『Early On』に収録されている本曲と次の「Take My Tip」は、シングルとは微妙に異なるテイクらしく、アーカイブを掘り起こすスタッフですら正確に音源を把握していなかった模様である。
4-Take My Tip(January, 15th, 1965)
(from 『Bowie 1965!』)
5-You've Got a Habit of Leaving(Until August, 1965)
(from 『Bowie 1965!』)
『Toy』でセルフ・カバーを行っている。
6-I Want My Baby Back(At the Time of Recording "You've Got
a Habit of Leaving," 1965)
(from 『Early On』、サブスク配信なし)
7-Baby Loves That Way(Until August, 1965)
(from 『Bowie 1965!』)
『Toy』でセルフ・カバーを行っている。
8-Glad I've Got Nobody(At the Time of Recording "Baby Loves That Way," 1965)
(from 『Early On』、サブスク配信なし)
スター願望を持った無名ミュージシャンの身で、よくもこんな陰気な曲名ばかりつけようと思ったものだ。余計なお世話だが。
9-I'll Follow You(At the Time of Recording "Baby Loves That Way," 1965)
(from 『Early On』、サブスク配信なし)
10-Bars Of The County Jail(Mid-1965)
(from 『Early On』、サブスク配信なし)
11-That's Where My Heart Is(Mid-1965)
(from 『Early On』、サブスク配信なし)
12-Can't Help Thinking About Me(Unknown, 1965)
(from 『Nothing Has Changed (The Best of David Bowie) [Deluxe Edition]』)
名義を「デヴィッド・ボウイ」に変えた第一弾シングルで、これまでの「明るい曲調でロクでもない歌詞」シリーズの集大成。ここまで勢い良くナルシシズムを宣言されると敵わない。
『Toy』でセルフ・カバーを行っている。
13-And I Say to Myself(Unknown, 1965)
(from 『I Dig Everything: The 1966 Pye Singles』)
14-Do Anything You Say(February, 22th, 1966)
(from 『Early On』、サブスク配信なし)
先述の『I Dig Everything: The 1966 Pye Singles』にも収められてはいるのだが、何故かピアノパートが欠けたミックスであるため注意(こちらの記事を参考にさせていただきました)。
15-Good Morning Girl(March, 7th, 1966)
(from 『I Dig Everything: The 1966 Pye Singles』)
16-I Dig Everything(June, 6th, 1966)
(from 『I Dig Everything: The 1966 Pye Singles』)
『Toy』でセルフ・カバーを行っている。
17-I'm Not Losing Sleep(July, 5th, 1966)
(from 『I Dig Everything: The 1966 Pye Singles』)
18-The London Boys(October, 18th, 1966)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
『Toy』でセルフ・カバーを行っている。
19-Did You Ever Have A Dream(November, 24th, 1966)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
20-The Laughing Gnome(January-March, 1967)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
ピッチを上げたボーカルとのやり取りがコミカルかつ実験的な珍品。
本当に余計なお世話であるが、この路線で売れてしまったらその先もミュージシャンを続ける覚悟はあったのか。
なお、1990年のツアーでは各会場でファンの投票によって1位になった曲をやるという試みがあり、NMEが悪ふざけでこの曲を1位にするように呼びかけ、めでたくその目標を達したもののボウイ側が無視するという珍事が起きている(曰く、アレンジをして演奏するという対応も考えていたとのこと)。
21-The Gospel According to Tony Day(Later onto January-, 1967)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
22-Toy Soldier(April, 5th, 1967)
(from 『The Last Chapter: Mods & Sods』、サブスク配信なし)
どちらかというと客演に近いが、コンポーザーやフロントマンとして、短期間ではあるがバンドの主役を務めていたので、ボウイ自身のレア曲にカウントして良いだろう。
なお、サブスクで配信されている『The Toy Soldier EP』に収録されたバージョンは、上記のコンピレーションで聞けるバージョンよりも30秒ほど短縮されたものであるため注意。
23-Waitng For The Man(April, 5th, 1967)
(from 『The Toy Soldier EP』)
言わずと知れた、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカバー。
24-Silly Boy Blue(April, 5th, 1967)
(from 『The Toy Soldier EP』)
デビューアルバム『David Bowie』の収録曲を、バンドのレパートリー用に再録音したアコギのデモ音源。そんな暇があれば自分の出世に努めろと言いたくなる。
25-When I Live My Dream (Different Version)(June, 3rd, 1967)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
上記アルバムに「When I Live My Dream (Version 2)」表記で収録されている。
26-Let Me Sleep Beside You(September, 1st, 1967)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
『Toy』でアップテンポなロックサウンドにアレンジされているが、デビュー時から彼がどれだけ優れたメロディーセンスを持っていたのかを再確認させてくれる名演であり、合わせて聞きたい。
27-Karma Man(September, 1st, 1967)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
28-In The Heat Of The Morning(March-April, 1968)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
『Toy』でセルフ・カバーを行っている。 名曲。
29-London, Bye, Ta-Ta(March-April, 1968)
(from 『Conversation Pieces』)
上記アルバムに「London, Bye, Ta-Ta (Decca Alternative Version)」表記で収録されている。
ストリングスの編曲はトニー・ヴィスコンティが担当。
30-Ching-A-Ling (Full Length)(October, 24th, 1968)
(from 『Conversation Pieces』)
上記アルバムに「Ching-A-Ling (Mono)」表記で収録されている。
ボウイの当時の恋人ヘルミオーネ、ギタリストのトニー・ヒルと組んでいた3人の複合芸術集団「Turquoise」で録音しており、トリプル・ボーカル体制を楽しむことが出来る。
31-Ching-A-Ling (Overdubbed by John Hutchinson)(November, 27th, 1968)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
上記アルバムに「Ching-A-Ling」表記で収録されている。
先の録音にいたトニー・ヒルが脱退したからと、後任ジョン・ハッチンソン(それまでに組んでいたThe Buzzのメンバーで、この後もジギー期のツアーメンバーに至るまで大きな貢献を果たす)によるオーバーダブを即座に施させるボウイ。
32-Sell Me A Coat (Re-Recorded Version)(January, 25th, 1969)
(from 『The Deram Anthology 1966 - 1968』)
上記アルバムに「Sell Me A Coat (Remix)」表記で収録されている。
追加で収録されたヘルミオーネとハッチンソンのコーラスが美しい。
33-Space Oddity (Alternative Take)(February, 2nd, 1969)
(from 『Conversation Pieces』)
上記アルバムに「Space Oddity (Morgan Studios) [Alternative Take]」表記で収録されている。
フルートソロの美しいフォークアレンジで、センスの良いカバーを聞いているかのような錯覚を覚える。
34-Unwashed and Somewhat Slightly Dazed (inc. Don't Sit Down)(Later onto June, 1969)
(from 『Conversation Pieces』)
上記アルバムに「Unwashed and Somewhat Slightly Dazed (inc. Don't Sit Down) [2009 Remaster]」表記で収録されている。
『Space Oddity』の収録曲であるが、曲名にある通り「Don't Sit Down」なる曲が最後に収められているバージョン。といっても、「Unwashed and Somewhat Slightly Dazed」のセッション音源と雑談が収められているだけで、大したものではないが。
1972年のアルバム再発時には「Don't Sit Down」部分がカットされ、その後、復活と削除を繰り返した挙句、最新の2019年リマスターでは「削除」が選ばれたため、本リストの仲間入りを果たした。
35-Conversations Pieces(Later onto June, 1969)
(from 『Conversation Pieces』)
『TOY』でカバーされた、この時期屈指の隠れた名曲。否、2019年に出たボックスセットのタイトルになっているので、隠れていない名曲(笑)。
2019年盤『Space Oddity』ではちゃっかりアルバム本編に紛れ込んでいるが、今まではアルバム曲として収録されていなかったので無事選考対象に。
36-Ragazzo Solo, Ragazza Sola(December, 20th, 1969)
(from 『Conversation Pieces』)
なんだこれは、と思う人も多いと思うが、聞けば納得。イタリア語版「Space Oddity」である(日付はボーカルの録音日を指している)。
ビートルズなどの60年代のバンドから80年代のイケイケミュージシャンまで、「外タレ」が諸外国語で歌っては各国のファンに媚を売る様が観測されているが、ボウイもその例に漏れず、ドイツ語、フランス語、日本語、中国語、インドネシア語...マルチリンガル(仮)ぶりでは他のミュージシャンに負けない堂々たる経歴の持ち主である。
37-The Prettiest Star (feat. Marc Bolan)(January, 1970)
(from 『Five Years 1969-1973』)
上記アルバムに「The Prettiest Star (Mono)」表記で収録されている。
タイトル通り、マーク・ボランがねちっこいギターを弾いている。セッションは2人の不仲のせいであまり上手くいかなかったらしいが、そう聞くと、フォークからの転身を先に果たしたボランが、本セッションで「ロックってのはこうヤるんだぜ!」とマウントを取っているかのように聞こえてしまう。
38-London, Bye, Ta-Ta ("99.999%" Marc Bolan plays the Lead Guitar by Tony Visconti)(January, 1970)
(from 『Sound and Vision』)
上記アルバムに「London, Bye, Ta-Ta)」表記で収録されている。
副題のヴィスコンティの証言が全てである(笑)。もしこのギターが彼の演奏でないならば、一体誰なんだ。
39-Columbine(For "The Looking Glass Murders," 1970)
40-The Mirror(For "The Looking Glass Murders," 1970)
41-Threepenny Pierrot(For "The Looking Glass Murders," 1970)
(公式音源なし)
音源がないものの、リスト入りしたのには訳がある。副題にもある「The Looking Glass Murders」というリンゼイ・ケンプ考案のTV番組の協力依頼を受けた彼は、パフォーマーとして出演に応じただけではなく、「Columbine」、「The Mirror」、「Threepenny Pierrot」という3曲の新曲を書き下ろし、挿入曲として提供している。
これらの楽曲が音源として公式に発表されたことはないが、非公式とも言えないために選出した。
42-Memory Of A Free Festival (Pt. 1)(March-April, 1970)
43-Memory Of A Free Festival (Pt. 2)(March-April, 1970)
(from 『Five Years 1969-1973』)
ロックサウンドを急速に取り入れていった1970年のボウイが、過去曲を大胆にリメイクして再録した成果がこれ。BBC用のセッションであったため、放送の尺に合わせて半端に分割されている。
前年に『Space Oddity』の1ピースとして発表された時のフォークサウンドは霧散し、自己主張の激しいシンセとソウルフルなコーラスが前面に出た正真正銘のロックアンセムに変貌している。今日び、一ミュージシャンがガラリと作風を変えるのに数年かかっているということを考えると、凄まじいスピードである。
44-Holy Holy (Demo)(Autumn, 1970)
(from 『Five Years 1969-1973』)
本プレイリストを締めくくるのは、良くも悪くも愛嬌溢れるポップな佳曲。ジギー時代にもアレンジされつつ結局お蔵入りになってしまったという顛末は、「万年二軍枠」を抜けることができなかったという様を物語っていて悲しい。
Bonus-Even A Fool Learns To Love (Unknown, 1968)
(公式音源なし)
先述の『The Looking Glass Murders』のための3曲とは異なり、こちらはフルでの公開も不明であるため、ボーナス扱いとした。
コアなボウイファン以外には耳慣れない曲名だろうが、「Ragazzo Solo, Ragazza Sola」同様、聞けばなるほどと納得するであろう。かのフランク・シナトラの代表曲「My Way」に瓜二つなこの曲は、フランス語の原曲版「Comme D'Habitude」からの英語詞コンペにおいて、ボウイが自分の持ち曲にするつもりで持ち込んでは見事に拒否されてしまったボツ案だ。
曲名はずばり「愚か者でも恋を知る」。もっと悪意を含ませると「どんなアホでも一丁前に恋をしやがる」。誰がそんな性根の腐ったバラードをラジオで流そうと思うかね... 「Life On Mars」でコード進行をパクったぐらいなので、相当根に持っていたらしいが、流石にそれは自業自得であろう。
録音に関してはホーム・デモとスタジオ・デモとの両方の存在が確認されているが、公式はラジオでどちらかのバージョンを断片的に流したのみで、現状出回ってるフルの音源はフェイクか本当の蔵出し音源かのいずれかである。
以上が、キャリア初期のレア曲と別バージョンの全貌となる。
もちろん、見落としがないとは言い切れない(記事作成途中で修正もあった)ため、間違いがあれば是非ご一報を。
作風やブレイク時期などのキリの良いタイミングを探しているうちに、44(+1)曲というかなりのボリュームになってしまったが、次回の1971-1975年は31曲、その次の1976-1982年は26曲と、比較的コンパクトに収まっていくため、シリーズ自体が頓挫することはないはずなのでご安心を。自分以外にこんな企画に興味を持つかは分からないが。
次回はボツになったアルバムのお話でも書きます。
P.S. 躁転したのかボウイマニアなだけなのか、判断が付かない。