直截の時間(募集中)

気ままに書きます。勉学(課題の超過)によって停滞する可能性あり、タイトルは募集中だし良いのがあれば変える。

今年読んでよかった本

ゴダール的方法』平倉圭

ゴダールの音と画のズレ、ソニマージュについて。ゴダールの映画は理解しようとしてはいけないが、理解しようとしないと実現し得ない。ゴダールの何をどう観たらいいのかという一つの答え。

 

『動きすぎてはいけない』千葉雅也

言わずもがな。内容はかなり忘れたのでまたドゥルーズに立ち戻ったら。反動ではないが、生きる上でのドゥルーズとしては氏の理解が肌感覚として馴染む。

 

ゴドーを待ちながら』サミュエル・ベケット

言わずもがな。自分も十回ぐらいお願いされないと座らないようになろうかな。

 

中国医学の歴史』傅維康

詳細な箇所は完全に流し読みしたが、圧巻の記述量。『黄帝内経』の偉大さが身に染みる。絶対的な現象としてのエビデンスありきの西洋科学に対して、体系的な論理は設定しているが「現実」には則していない中国医学。どちらも「正しい」のだろうか?

 

HSPブームの功罪を問う』飯村周平

酷なことを言うと、病気や障害は儲かるし、人は自己に変化を強いるよりは類似した他者他者に同化することを選ぶという事実。鬱を自己責任に矮小化させる社会、ハッシュタグで繋がってOD自慢をして傷を舐め合う人たち、何が責められるべきで何が正されるべきなのか、部分的に全部なのだろう。

 

文化大革命』フランク・ディケーター

(未記入)

 

『失敗から学ぶユーザインターフェース』中村聡

会社の最初の上司から借りて読んだ本だが、もはやギャグなので誰でも読める。日本の電車の券売機で、呼び出すと間の壁から駅員がヌッと現れるアレは究極のUIなのかもしれない。ちょっと違うが、初見の飲食店の良し悪しを判断するのは、内装やレイアウト、チョーク書きのメニューであったり、匂いなどの料理そのものの刺激からではなくビジュアル面に寄っているところが多い以上、「(ラーメンオタクは)ラーメンではなく情報を食べている」というラーメンハゲの言うこともあながち誰にとってもあるあるなのかもしれない。ラーメンハゲも今年読んだよかった作品の一つ。

 

『ひとつではない女の性』リュス・イリガライ

ジェンダーをめぐる言説の根本に巣食う「論理」は男により構築されたと喝破する美しい書籍。うっとりとしてしまった。考えねば。

 

トランスジェンダー問題』ショーン・フェイ

今年も二次加害に溺れて一年が終わろうとしている。「性」への攻撃の中でも極めて過激なのがトランスジェンダーに向けられたそれである。この書籍から入ることで他の様々な「性」の暴力を考えるきっかけにもなる。

 

『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』坂本龍一

本人が呑気に来る終わりを見据えながら語る本編の後、亡くなる直前までを克明に記録した補記があり、それがかなり堪えた。保養地で読み終わった後、温泉まんじゅうを泣きながら食べた。

 

『ヴァギナ 女性器の文化史』キャサリン・ブラックリッジ

予測変換で「女性器」が候補に出てこず、既に立腹している。なんだ、女性器ごときで。「まんこ」を3歳児の「ちんちん」並のトーンで言えるようにできる世の中にしなきゃいけないんだぞ。そういう立腹を様々な観点で正当化し、さらに想像以上に深い世界であることを教授してくれる素晴らしき啓蒙書。しかし、タブーになりすぎて、近年になるまで近世の頃の医学知識以下の知識しかなかったとは。アナール学派も関わる性に関する歴史の本は何冊か読んだが、これがダントツで良かったです。日本版は表紙にモザイクがかかってカラー写真が認められなかったのも皮肉でよし。

 

湯神くんには友達がいない佐倉準

彼女に距離を取られ、別れる寸前まで行く間に読み返していた、自分が最も愛する漫画。この中の誰にもなりきってはいけないが、誰も切り捨てられないし、全部が自分であるし、自分だけが全部変わらないと物事が変わらないわけではないし、割と偶然で自分は最低限の努力の風向きが変わることもあれば、逆も然り。改心ものでもなんやかんやの恋愛ものでもないのが良い。人生うやむやの結論のない感じで生きてても良いのよね〜 別れずに済んだのは間違いなくこの本も影響していますね、ありがとうございます。

 

物質と記憶』アンリ・ベルクソン

これは先方が今後も仲良くしてくれると言ってくれる半ばから読み返す。貪るように哲学書を読んだのは初めてかもしれない。ベルクソンが自分をストーキングして説教するために書いたのかと思った。最高の自己啓発書です。

 

『夢の遠近法 山尾悠子初期作品集』山尾悠子

彼女と疎遠になったことで育まれた関係性もあり、読もう読もうと山尾悠子を読もうとした原動力となった人があり、これを書いている途中で新年会の日取りについてその人に連絡することを思い出した。ちょうど彼女と押尾守の『天使のたまご』を観ている最中で、あの世界観を重ね合わせて心地よくなっていた。幻想の中に沈むのも悪くないね。

 

精神分析にとって女とは何か』西見奈子・北村婦美・鈴木菜実子・松本卓也

年末に読んだ一番良かった本。自分は反証不能な幼児期の精神構造を論立てて性器周辺で説明する精神分析にそもそもの不信の念を抱き、後期の理論には触れず中期ラカンの理論をありがたく援用する小手先の精神分析が広まる人文系の風潮を蔑んでいるので、和解のためにこのような本が読めたのはいい経験になった。反証不能とはいえ、臨床現場での効用を考えられ、女性分析家の逆転移問題など、職場の女性蔑視だけに括られない仕事上での課題・研究すべき観点が提示され、もっと臨床の本が読みたくなった。マツタクの補論は「男」側から見るフロイトラカンの女性論の再検討で、執筆者間の信頼を感じる本構成であったのも読んでいて多幸感があった。